板話§御名残三月大歌舞伎第二部

[承前]

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第二部は『菅原伝授手習鑑』から、筆法伝授と『弁天娘女男白浪』が
出た。

日頃、歌舞伎座も通し狂言を充実させるべきだと書いてきたのだが、
菅原伝授の通しは演じる役者も観る客も、これは大変だということが
理解できたのである。

三部の『道明寺』は後述するとして、まずは『筆法伝授』からだが、
動きが本当に少ない芝居なので、1時間半足らずにしてもずいぶんと
長く感じられた。そんな退屈になりかかりそうな舞台を救ったのは、
東蔵の左中弁希世だろう。

菅丞相から筆法を伝授されると思っていたら、菅丞相は勘当した源蔵
に与えたのだった。それを嫉んでの(コミカルな)いじわるというか、
いびりをする東蔵の左中弁希世は、いささか重苦しい舞台を救ってく
れていたようだ。仁左衛門の菅丞相がひたすら沈潜していて重苦しい
空気だったのが和らげられたように感じられたのだ。

『筆法伝授』を観たことで、ようやく全体の流れをつかむことができ
た。それにしてもこれを通しで観るのは相当な覚悟が必要である。

二本目はおなじみ弁天小僧。菊五郎の風貌も、さすがに小僧というよ
うな感じではなくなってきているが、長年の持ち役として芝居の間の
取り方などさすがに手練れなものがあって、安心して観ていられる。
心配なのは南郷力丸を演じた吉右衛門の膝である。

大看板二人の顔合わせを楽しむことはできたものの、舞台上で正座が
できないというのは辛いものがある。まだそんな年齢ではないのだか
ら、きちんと治療してほしいものだ。

幸四郎の日本駄右衛門、左團次の忠信利平、梅玉の赤星十三郎を加え
たつらねは、大歌舞伎の醍醐味を満喫。

それにしても、三部構成で二本立て演目のうちの一つが、あまり馴染
みのない狂言というのも、こういう機会だからと歌舞伎座に足を運ん
だ初めてのお客さんは戸惑い疲れたのではなかろうか。それについて
は、第三部でもう少し書いてみる。
                            [続く]

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