媚話§マルケ王~トリスタンとイゾルデ~

エヴァとの恋を断念したハンス・ザックスが、彼女に向かって……

私はトリスタンとイゾルデの悲劇を知っている

……と語りかけつつ「ハンス・ザックスは賢明だったからマルケ王の
ようにはならない・・・」と駄目押しを一言。外野で眺めている身に
してみれば“おいおい、風来坊みたいな若造騎士よりは、腕も確かな
靴屋のマイスターのほうがいいだろ”などとエヴァに向かって突っ込
みの一つも入れたくなる。

おそらくザックスも同じようなことを考えているわけで、若いという
ことは・・・まあそういうことなのだ。いずれはエヴァも痛い目に遭
うに違いない。

ザックスに比べるとマルケ王のほうがまだ人がよかったということが
できそうだ。甥のトリスタンに“おじさん、いい娘がいまっせ”とか
言われたのを受け入れて、後添えにしようと決めたのだから。それに
よもや二人が媚薬なんか飲んじゃってなんて……聞いてないよ状態で
あったわけだし。

いずれにしても、ニュルンベルクより状況がはるかに複雑になる要素
は十分に孕んでいたということである。まあ、寝盗られてしたったマ
ルケにしてみれば、怒るなというほうが無理な話なのである。

結局、この悲劇が幕を閉じる時点で生き残ったの(と思える)は、マル
ケ王とブランゲーネの二人。マルケが“みんな死んでしまった”と嘆
くのも当然のことである。それにしても、なぜブランゲーネは、毒薬
を媚薬とすり替えてしまったのか。これは考えても考えてもいまだに
答えが出ないまま……。

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この記事へのコメント

楕円球
2010年04月09日 14:57
こんにちは。
あのザックスの歌の部分、何回聞いてもシビれてしまいます。オトナの分別ってやつでしょうか。なんだか薔薇の騎士の元帥夫人がオーバーラップしてしまうのですが、マイスタージンガーの名場面の1つか、と思います。
HIDAMARI
2010年04月10日 23:46
ザックスも元帥夫人も、口には出さねど・・・みたいな感じがしないでもないですからね。それこそ“大人の分別”といえば聞こえはいいのだけれど……。

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