棒話§ダニエル・バレンボイム[Ⅱ]

[承前]

というわけで1991年にバイロイト初詣。バレンボイムの指揮に接した
のである。ハリー・クプファーが演出した『ニーベルングの指環』の
舞台は刺激的で、それに絡むワーグナーの音楽の濃厚なこと。

当時は、まだバイロイトの音響の何たるかを感じ取ることができない
ままだったのだが、それでも初めて聴くバレンボイムの音楽に引き込
まれたのは事実である。単純に言うなら“音楽の豊かな表情づけ”と
いうことになろうか。

時に“くどい”と思わせるところがないわけではない。だが、圧倒的
な力技でねじ伏せてくる圧力に抗することなどできず、まだワーグナ
ーの何たるかすらわかっていなかった、無謀な巡礼者は呆然と音楽の
洪水の水面で必死に呼吸を続けるのみであった。

それにしてもと思うのは、日本での評価があまり芳しくないと感じら
れることである。やっぱり鼻っ柱が強そうなのは嫌われるのだろうか
と思う。基本的には実演でどういう音楽を演奏するのかということを
考えるものだから、そうすると“やっぱ、バレンボイムすげー!”と
いうことになって、日本における評価とのギャップに首を傾げること
になってしまうのだ。

確かに、というかバレンボイムに関して、好き嫌いは相当に分かれる
だろうとは思う。そんなあたりについては……次回あたり、かな。
                            [続く]

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