懐話§昭和三十年代~物売り~

[承前]

そういえば、家の周囲に物売りが頻繁にやって来ていたのは昭和30年
代までのことだった。

毎日のことだと、朝やってくるのが納豆売り。自転車の荷台に木箱を
載せていた。その中から納豆を経木に取り分け、辛子と青海苔をちょ
いとつけて売ってくれた。それが朝の食卓にのぼるのである。そうや
って納豆売りがやってきていたから、食料品店で納豆を買ったという
記憶がない。

夕方はどこでもそうだが豆腐売り。これも荷台に木箱を載せて、おな
じみのラッパを吹いて到来を知らせていた。豆腐はもちろん、油揚、
厚揚にがんもどきを積んでやってきた。

どちらも町内を通過する大体の時間というのが決まっていて、それに
そうスピードを出して行き過ぎるわけではないから、必要だったら声
を掛けつつ追いかけていけばいい。そういう仕事は大抵子供の役目で
ある。

あとは、以前にも書いたが季節ごとにやってくる行商がいて、一つは
唐辛子売り。玄関で調合して売ってくれるのだが、ケースの中にある
香辛料が色とりどりで、子供の目にも待ち遠しかった記憶。それから
もちろん富山の薬売りである。置いていく薬のカラフルなデザインの
パッケージが、バラエティに富んでいて子供心にも楽しかったという
記憶だが、待ち遠しかったのはお土産にもらえる紙風船だとか独楽だ
ったりしたのだ。
                            [続く]

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