円話§LPの時代から

自分の小遣いで初めてLPを買ったのは、いつでどこだったのか、克
明に覚えている。それが、なぜか、とんでもないことに……

1970年の大阪万博ソ連パビリオン

……何を血迷ったのかわからないが、買うに事欠いてLPを買うとは
どういう心持ちだったのだろう。第一その当時、我が家にはレコード
プレイヤーがなかったのである。

プレイヤーがなかったのにLPが欲しかった……そういう飢餓感らし
きものが存在していたということが説明になるだろうか。

そしてようやく、オーディオのセットが自分の許にやってきたのは、
1975年のことである。そこからアルバイトで稼いだ金で細々と1枚、
2枚とLPを買い貯めていったのだ。

思えばレコード屋というものは重量感のようなものがあって、レコー
ド一枚一枚の質感が店の空気となっていたように思うのである。

だから、買いに来る客の中には実に神経質な手合いがいて、買おうと
思ってレジに数枚のLPを持って行き、そこで“検盤”といって、傷
や歪みがないか眼を皿のようにして溝と対峙するのだが、その対峙が
半端ではなかったのだ。

じーっと、鼻先がくっつきそうなくらい盤面に眼を近づけてじっくり
チェックを入れるその姿は、なかなかに鬼気迫るものがあった。自分
自身はというと、そこまで舐めるようにみることはせず、せいぜい盤
が歪んでいるかどうかをチェックした程度だった。

CDが普及し始めた時は“ああ、これでレコード針の交換だとか針圧
とかプレイヤーの水平維持とかを気にせずに済む”と素直に思ったの
である。

追記:ちなみに、その時買ったレコードはチャイコフスキーの悲愴交
響曲。ジャケットがロシア語で書かれていたので演奏者は不明……。


【去年の今日】板話§六月大歌舞伎夜の部~松本金太郎~

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