外話§亀治郎の会~国立劇場~狐忠信

国立劇場『第8回亀治郎の会』土曜日夜の部を観てきた。

まず、猿之助四十八撰の内『義経千本桜』から『道行初音旅』と『川
連法眼館の場』が、それと『上州土産百両首』という演目である。

伯父である猿之助指導で澤瀉屋の狐忠信というのが目玉というもので
『道行初音旅』から。取れた席が一階花道の外という条件で、芝雀の
静御前の花道の出を振り向いて見るという。そんな場所でなど久しく
観たことなどない。

静に続いてスッポンから狐忠信が登場する。その姿に細身の猿之助の
というイメージが重なった。亀治郎も芝雀も、二人とも実に殊勝かつ
丁寧に舞台を進めていく。初役というものはかくも人間を慎重にさせ
るものかと思うのだ。

そして川連の場で亀治郎は炸裂した。踊り盛りでもあるわけで、時折
ニヤリと不敵に笑ってみせるようなところもあるが、動きのキレは例
によって抜群である。このところ悠揚迫らぬ音羽屋型の忠信ばかり見
ていたから、澤瀉屋のケレンが目を楽しませてくれる。宙乗りの六法
のはじけようもまたしかり。

残念ながらというか亀治郎の声音が若干というか高めだった。彼の声
塩梅の落ち着きどころがそのあたりということだろうが、もう少しば
かり低い声音のほうが安心して台詞も楽しめるのだが……。まあ、い
ずれは調整がついてくれることだろう。

それにしても初めての国立大劇場だったが、歌舞伎座あたりとの音響
の違いに戸惑った。附け打ちの音がやけにうるさかったのである。そ
れと舞台からの台詞がいささか聞き取りにくいことがあった。

個人的な想像でしかないが、亀治郎はいずれ遠くない時期に、彼の世
代の中で今の勘三郎のような役割を担っていくような気がしている。

《歌舞伎のトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック