鎖話§『表に出ろいっ!』野田地図番外

中村勘三郎の夫、野田秀樹の妻、それにオーディションで選ばれたダ
ブルキャストの娘という出演者でNODA・MAP番外編『表に出ろいっ!』
が上演された。場所は池袋・東京芸術劇場小ホール。

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アミューズメントパーク“東京ディスティニーランド”大好きの夫、
アイドルグループ“ジャパニーズ”に入れ揚げる妻、そしてハンバー
ガー・チェーンのキャラクターをコンプリートすることに血道をあげ
る娘。誰が留守番をして臨月となった愛犬“ピナ・バウシュ”の世話
をするのかということが問題となった……。

登場人物の二人が組んで残る一人を攻撃して留守番をさせようと目論
むのだが、攻撃している二人のうちの一人が突然仲間割れをして、さ
っきまで攻撃していた相手とタッグを組んで……というループが繰り
返される。

人間、自分が信じるものへの白紙委任と、相手が信じるものに対して
単純否定という図式がある。野田の台本はこのテーマを基にして、あ
り得ないいかにも他愛なく馬鹿馬鹿しいシチュエーションを展開させ
て客席を笑わせ続けるのだ。

ところが突然、娘が“カルト信者”だったことが暴露されることで、
ストーリーはシリアスな方向へと舵を切るのだ。他愛ないものを愛で
ることと、ナンセンス極まりないカルトとの狭間で家族は……という
問いを突きつけられるのだった。

野田の書いたプログラム前文を読んでいて、そういったことの典型が
つい最近の“9・11”をめぐるキリスト教狂信牧師のコーラン攻撃騒動
そのものではないかと気づかされるのだ。

上演時間1時間15分ほどの間、中村勘三郎、野田秀樹、太田緑ロラン
スが繰り広げる台詞の膨大さとそのスピードに、何とかついていきつ
つ、野田秀樹という才能に舌を巻いたのである。

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