映話§ラインの黄金~I met MET~[下]

[承前]

舞台機構で効果的と思えたのは一か所。ヴォータンとローゲがニーベ
ルハイムに下りていく場面で、縦格子がエッシャーの騙し絵のように
湾曲した階段になって、そこを二人(吹き替え)が歩いていくというあ
たりくらいでしかなかった。

巨人も巨人らしくないし、これまたファーゾルトとフライアが見つめ
あってという裏の恋愛関係を暗示する演出があったくらい。

ヴォータンを歌ったブリン・ターフェルが語っていたように、歌手は
ほとんど舞台前面で歌うということになった。歌いやすいかもしれな
いが、縦格子が奥行を阻んでいるおかげで、歌手の動きが制約を受け
たという気がするのだ。フリッカがあまりに巨大な体躯で動きがまま
ならずというのもさすがに興を殺ぐことはなはだしく。

さらには、もっと動いてしかるべくなローゲに精彩がなく、ブーイン
グを一身に受けてしまっていた。というわけで、あの装置であの程度
の動きでは、説得力ある舞台に仕上がっていたとは言えない。ああい
う装置にしては衣装が――メトらしく――大時代なデザインで、これ
では明らかに装置との乖離である。

というわけで、来年夏の『ワルキューレ』から続く残り三夜を見に行
くかどうかは、今のところ微妙な情勢となってきている。『ワルキュ
ーレ』でジークムントを歌うのがヨナス・カウフマンというあたりが
悩ましいところなのではあるが……さて。

《憬話§我々の“バイロイト音楽祭”2008.08》

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