共話§待降節独墺旅[6]出かけたが

[承前]

後発組(自分だが)が到着したのを待ちかねたかのように、合流2日目
はフィルハーモニーでクラウディオ・アバド指揮&ベルリンフィルに
よる『トリスタンとイゾルデ』が演奏会形式で行なわれるのだ。

翌1999年春のザルツブルク・イースター音楽祭を前にした、ベルリン
では唯一の公演なのである。そうであるからチケットは争奪戦となっ
ていて、我々も四苦八苦しつつ何とかかんとか手に入れることができ
たのだった。しかも、初めて本拠地であるフィルハーモニーでのベル
リンフィル体験である。

万全を期すべく、昼食はベルリンで一番うまいらしい中華料理屋で食
べた。16時開演に向けて身支度をし、100番のバスに乗って出かけ
たが、これが失敗の始まり。ブランデンブルク門手前で乗り換えよう
としたつもりが、気がついたらブランデンブルク門まで乗過ごしてし
まった。

初めての場所なのに、技を使おうとした大間抜けである。当然ながら
同居人の機嫌を損ねてしまった。感慨を持って眺めるつもりだったブ
ランデンブルク門との邂逅はこんな感じで行なわれたのだ。

四の五のと考えるよりは、まずタクシーだと思ったところに運良くタ
クシーがやってきてくれたので、フィルハーモニーを目指す。

ブランデンブルク門付近からは5分足らず、歩いても10分くらいの場
所にフィルハーモニーはあった。ベルリンの壁が立っていた場所は、
ほんの眼と鼻の先で、その先にポツダム広場の再開発工事現場が寒々
しく広がっていた。

なるほど、カラヤンが“いずれこのあたりがベルリンの中心になる”
と言って場所を決めたというのが肯けるのだった。そのカラヤンは、
壁が崩壊する一年前に逝去していたのである。
                            [続く]

《ベルリンのトピックス一覧》

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