懐話§昭和三十年代~デパート大食堂~

[承前]

子供の頃デパートに行き、さらに最上階の大食堂で何かを食べるとい
うのは、最高のぜいたくだった。

田舎町から電車で県庁所在地の街に行くと中規模のデパートがいくつ
かあって、2か月に一度くらいで買い物に連れていってもらうのが楽
しみだったのである。

それで、ひとしきりの買い物が終わって食堂に行く。子供が食べる昼
食など、せいぜいがサンドイッチにクリームソーダみたいなものであ
るが、入口で買った食券をウエイトレスが指パッチンで器用に半券に
するのを不思議そうに眺めていたことを思い出す。

時が経って、今住んでいるエリアにデパートが開店したのは、折しも
バブル真っ盛りの頃である。最上階には、寿司屋や蕎麦屋などの専門
店街と一緒に家族で入れるような大食堂もオープンしたのだ。

味はどうということはないが、夫婦で食べたいジャンルが異なってし
まう時など、こういう食堂は単純に便利で何度となく使った記憶があ
る。そういえば、その時は既に食券ではなく、レジでレシートを受け
取ってというシステムに変わっていたのだった。

デパートの大食堂という昭和の香りがぷんぷんと香るような存在は、
今風前の灯であるように見える。時代は移り、人々の嗜好も変わった
ということなのだろうか。
                            [続く]

【去年の今日】讃話§演奏会で~いわゆる“一般参賀”~

この記事へのコメント

IZK-TSH
2010年12月08日 08:45
今週の『週刊朝日』(12/17号)の東海林さだおの連載エッセイが,まさに「デパートの大食堂」の話です。
HIDAMARI
2010年12月08日 11:08
はい、まさにそこからヒントをいただきました。東海林さんのエッセイのようには書けませんから、あくまでも個人的な思い出として書き留めておくというつもりです。

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