惜話§映画『わが心の歌舞伎座』東劇

『わが心の歌舞伎座』……歌舞伎が好き、そして少しでも歌舞伎座に
通ったことのある人には必見の映画である。

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中村芝翫に始まって10人ほどの役者が歌舞伎と歌舞伎座を語っていく
という構成。間に黒御簾内や大道具、小道具、衣装、床山といったス
タッフの仕事も挟まれていく。

ほぼ満員の客席も思い入れ多い人達だったようで、普段の歌舞伎公演
より静かな館内だった。そして時折すすり上げる音があちこちで。

『仮名手本忠臣蔵』四段目、判官切腹の場で襖の外に控える諸士達が
客席から見えないのに平伏しているという、以前に関容子のエッセー
で読んだ、その実際の映像を眼にして粛然となった。何度か観たこの
段がいかに特別なものであるのかが理解できたのである。

歌右衛門の納骨の日、梅玉と魁春が歌舞伎座に立ち寄った。スタッフ
に言われるままに入ったら舞台には『道成寺』の設えがなされていた
上に、三階には大向こうが待ち構えていて“成駒屋、大成駒”と声が
かかった。……話には聞いていたことが撮影された写真で見ると……
これはまずいのだ。かなりググっときてしまった。

そして、切れに切れていた富十郎や猿之助の踊り。富十郎が自在に踊
っていた時代は観ていなかったし、猿之助の千本桜を観た時は、まだ
何だかわからなかった。そんな映像の一つ一つを眺めながら、もう少
し早くから観始められなかったかと、詮のないことを考えていたので
ある。

それにしても歌舞伎座60年。楽屋に入る敷居がかくも磨り減っていた
のかと、いかに歌舞伎座が使われ尽くしたのかがよくわかったのだ。

そして、出演したベテラン俳優の一人の「新しい歌舞伎座を担うのは
我々より若い役者達。彼らにうまくバトンを渡すのが我々の役割」と
いう言葉が印象的に響いて聞こえる。

14時半に始まり17時40分に映画がはねて東劇を出たら、基礎工事が始
まったばかりで空っぽの歌舞伎座跡地が浮かび上がっているのを見て
改めて歌舞伎座の存在の大きさを実感した。

《歌舞伎のトピックス一覧》

この記事へのコメント

ぴかちゅう
2011年02月06日 01:19
拙ブログにTBを有難うございます。TB返しを何回か試みましたがうまくいかないので、下記に該当記事のURLを書かせていただきます。
http://blog.goo.ne.jp/pika1214/d/20110126
>「新しい歌舞伎座を担うのは我々より若い役者達。彼らにうまくバトンを渡すのが我々の役割」......確か仁左衛門丈がおっしゃっていたと思います。
さよなら公演が始まった時にはまだまお元気だった雀右衛門丈が舞台に姿を見せなくなり、猿之助丈ともども舞台映像だけになり、富十郎丈も1/3にお亡くなりになり、歌舞伎座建て替えの間に急速に世代交代がすすむだろうという予感は現実のものとなってしまいました。歌舞伎座がない間もいろいろな劇場で中堅・若手の活躍・成長を観続けていこうと思っています。そしてその中で私の中に蓄積されるものが楽しみです。
HIDAMARI
2011年02月07日 07:20
コメントをありがとうございます。

TBとコメントは、ひとまず管理人のボックスで保留状態に置かれてから反映されます。

蓄積される存在としての歌舞伎ということを強烈に認識できた映画だったと思います。

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