重話§ラ・ボエーム~プッチーニ~

ずいぶんと聴いていないなあという、プッチーニの『ラ・ボエーム』
である。

何しろ1981年ミラノ・スカラ座日本公演のチケットが取れたので、あ
わてて録音を買ってきて泥縄状態で聴き始めたのだった。カラヤンが
指揮して、フレーニのミミにパヴァロッティのロドルフォという盤。

一幕冒頭のはずむような音楽とは裏腹に、舞台はパリ屋根裏の安アパ
ート。金はないが気力はあるという、いしいひさいち描く安下宿仲間
のような世界である……微妙に違う。

という予習もいい加減に済ませて臨んだ実演は、想像していたオペラ
の舞台を超越していたのだった。ちょいとばかりデフォルメ気味な屋
根裏部屋はともかく、二幕カフェ・モミュスの人海戦術には度肝を抜
かれたが、それよりも驚いたのは第三幕のダンフェール門外の場面。

登場人物は影のようにしか見えず、ただし雪に覆われた舞台全体は、
装置であるにもかかわらず、幕が開いた瞬間に思わず寒さを感じて身
をすくめたという記憶がある。

指揮はカルロス・クライバー。彼の力はもちろんだが、スカラオーケ
ストラのカンタービレは真似をしようと思っても、誰もができるはず
もない……歌手に、そして舞台の状況に応じて泣き、笑い、ため息を
つくのだ。オーケストラの音で涙が出たのは、ウィーンフィルに続い
て2度目のことだった。

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