再話§ハーディング&新日フィル

3月11日の大震災当日、すみだトリフォニーで行われた演奏会の聴衆
は数十人だったと聞いた。そんな日に敢然と演奏会をやったハーディ
ングと新日フィルは伝説となったのだ。

結局、翌日以降の演奏会は中止になってしまった、そんな代替公演を
聴かんと、急遽サントリーホールに赴いたのである。

前日の電話予約とて、取れた席は1階奥の壁際と条件はあまりよくは
なくて上階(LC席)の庇下という……。

本公演の一曲目『パルジファル』前奏曲は『エニグマ』第九変奏“ニ
ムロッド”に変更。震災の犠牲者に捧げられた。

少し間があって本プロ。マーラー交響曲第5番である。コントラスト
を十分に意識したハーディングの指揮にオケもぴったりと反応しての
演奏。冒頭からテンポはやや重めだが、暗い翳のような印象はなく、
むしろすっきりとまとまった印象。

ただし、オケの行儀がいいものだから突出した表現はなくて、どこか
歪みきれないマーラーという。端正さとグロテスクと、どっちを選択
するか迷うところではあるが、2楽章や3楽章の時に気まぐれな楽想
の変化を生かすには、予定調和するだけではなく、指揮に反応するの
とは別の意味で、オケの自主性のようなものも時には必要ではないか
と感じたのである。

終演後、出口に向かったところでハーディング自らが募金箱を持って
帰りがけの客に募金を呼び掛けていたので、少しだけ協力してきた。

今回の震災に対するハーディングのスタンスはあっぱれという一言で
敬意を表したい。反面こういう人がいたことを忘れることはできぬ。

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