木話§クラリネット五重奏曲を耳にして

土曜日にドイツ文化会館で行われたバイエルン国立歌劇場メンバーに
よるチャリティ演奏会で、久々にモーツァルトのクラリネット五重奏
曲を生で聴いた。20年ぶりくらいだろうか。

死の2年前、ほとんど晩年と言ってもいいくらいの33歳頃の作品であ
る。絶対音感を持ち合わせていないので、調性による音楽の表情の違
いなどを感じ取ることなどできはしないが、例えば同じイ長調で23番
のピアノ協奏曲とも通じる何がしかを持っているような気がする。

何というか、全面的に明るいというのとは少しばかり違っていて、ど
こかメランコリックな感触を持った長調の音楽が流れていくのだ。そ
れは、何の濁りのないハ長調とは違って、明るい音色のパレットに、
少しばかり灰色味を加えたと言えばいいだろうか。

驚いたことに、第二楽章はニ長調なのである。そんなことついさっき
知ったことで、イ長調か親戚の調だと思い込んでいたので、ちょいと
ばかり戸惑っている。

そんな戸惑いは別にしても、この曲全体から感じられる“ぬくもり”
はどこからやってきたのだろう。これがモーツァルトの眼差しなのだ
ろうか……こんな眼差しを33歳にして持ち合わせてしまった人間とは
いったいどんな存在なのだろうか。

聴いている最中は、あんな音やこんな音が鳴っているということばか
りに耳を奪われながらモーツァルトの表情を窺おうとしていたのだ。

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