質話§ローエングリン~ヨハン・ボタ~

[承前]

オーケストラに続いては歌手と合唱について書いてみる。

まずもって、今回の『ローエングリン』を成功に導いたのがタイトル
ロールを歌ったヨハン・ボタであることは間違いないだろう。何だか
な理由で来日を回避したK氏に代わって、彼は十全といえる歌唱をホ
ール全体に響き渡らせたのだった。

ただし演技らしきものはほとんどなし、最少限の動きだけであったの
は……しかたがないのかな。

エルザを歌ったエミリー・マギーは相変わらず力不足は否めず、どう
も魅力に乏しいとしか言えない。それで、悪役のほうがおもしろいの
だということを我が身で証明して見せているのがワルトラウト・マイ
ヤー演じるオルトルートである。

1991年以来ちょうど20年聴いたマイヤーだが、五十代半ばとなって、
さすがに高音はきつくなってしまったが存在感ある悪役の演技は健在
で、特に2幕と3幕の幕切れあたりでは舞台をきっちり締めていた。
ローエングリンでは彼女が要だったりするわけで、マイヤーくらいの
歌手でないとおもしろさが半減する。

その他の男声陣、フリードリヒのエウゲニ・ニキーティン、国王ハイ
ンリヒのクリスティン・ジークムントソン、伝令使のマルティン・ガ
ントナーもふさわしい歌声で、上々のアンサンブルと言えるだろう。

というところで合唱に移ってみよう。派手なアクションこそ要求され
ていたわけではないが、何度か舞台後方に聳え立つ鉄製のブリッジに
上って歌うことになった。舞台上で歌っている時は申し分のない音量
で聴こえた合唱だが上で歌いだすと音楽が拡散するわ、ズレるわで、
せっかくの合唱を台無しにされた気分だった。これは、ミュンヘンの
本舞台でも同様だったのか、NHKホールの巨大舞台空間のゆえか。

何でもこれまでにNHKホール舞台にのった最重量の舞台装置だとい
うのだが、わざわざ合唱を高いところに上がらせる必要があったのか
疑問である。というところで、話は演出へと……。
                            [続く]

《憬話§我々の“バイロイト音楽祭”2008.08》

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