芝話§ナクソス島のアリアドネ[上]

[承前]

バイエルン国立歌劇場日本公演3つ目の演目として『ナクソス島のア
リアドネ』の公演に行ってきた。連休初日10月8日の東京文化会館。

伝わってきたアドバイスは“開演15分前に座っていろ”というもので
あったので伝聞に従って自席に座っていた。10分ほど前に幕が開くと
舞台はバレエのレッスンシーン。練習ピアニストが弾くのは『エーデ
ルワイス』だったりスコット・ジョプリンだったり『ムーンリバー』
というもの。そこに意味するところがあるかどうかは不明。

15分ほどレッスンシーンが続き、バレエ教師の「音楽をどうぞ」とい
う言葉でプロローグの序曲が始まった。というわけで、プロローグの
前に、さらにプロローグがあるという。演出のロバート・カーセンと
いう人は現実と舞台の境界を取っ払って、虚実ないまぜにするのが得
意だと聞いたが、いきなりその洗礼を受けたのである。そしてその後
序幕は、作曲家が自分の作品をズタズタにされる様を淡々と描いてい
く。

ケント・ナガノの音楽は序曲のテンポの速さには驚かされたが、彼の
特徴かどうか中庸を保った音楽が流れていく。時としてもう少しコク
とか盛り上がりがほしいと思ったりしないでもないのだが。

かくして屋敷の主人の気まぐれに翻弄された作曲家や役者、歌手達は
本編へと突入していくのであるが、カーテンが閉じられた舞台に作曲
家が一人残ってぎごちなく挨拶。観客もそれに対して拍手をするが、
作曲家はトコトコと舞台を降りて最前列を歩き、ピットの指揮者にそ
れまで自分が削りに削らされたスコアを渡して退場……この時点で、
現実と舞台の境界は曖昧になっていくのだった。
                            [続く]

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