流話§バッハ無伴奏チェロ組曲第5番

先週金曜日の昼30分ほど、神保町の岩波書店本社1階のホワイエで、
ウィーンフィルのソロ・チェロ奏者タマーシュ・ヴァルガのチャリテ
ィ・ミニコンサートが行われた。

曲目はバッハの無伴奏チェロ組曲第5番。ヴァルガの淀みなく深々と
した独奏を、ほんの数m足らずという間近で聴いたことで、バッハの
巨大さを否応もなく感じ取ることができたことと、この曲を演奏する
ことが――軽々と弾いているのだが――チェロ奏者に課せられた大き
な命題なのだと思い知ったのである。

ちょっと気がついたのは、演奏中の呼吸。管楽器奏者にしてみれば、
呼吸で音を出しているのだが、弦楽器の場合は奏者が息をしなくても
音を出し続けることはできるので、ひょっとして呼吸を忘れそうにな
るのではと思ったこともあるが、ヴァルガの息遣いを間近で聴いて、
それが音楽に寄り添ってのことなのだと納得できた。

なるほど、こういういことをしているのかと興味深かったのは、開放
弦の時に、チェロ本体の表板に左手の指をつけてヴィブラートをかけ
るということだった。そもそも開放弦にヴィイブラートなど存在しな
いと思っていたので、こういうワザもあるのかと感心したのだ。

アンコールには第1番からサラバンドが。これもまたたっぷりとした
懐の深い演奏に満足した。満足したのはいいが、すっかりアドレナリ
ンを使い果たして、その日の午後は使いものにならなくなったことを
白状せねばならない。

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