暗話§マティアス・ゲルネのリート

一昨日の日曜日夜、オペラシティ・コンサートホールでマティアス・
ゲルネのリート・リサイタルを聴いてきた。休憩なしの1時間半で、
プログラムは以下の通り。ピアノはアレクサンダー・シュマルツ。

【Ⅰ】愛、人間性
マーラー:私は快い香りを吸いこんだ
          (「リュッケルトの詩による5つの歌曲」から)
シューマン:詩人の目覚め(「6つのリート」op.36から)
      愛の使い(「6つのリート」op.36から)
マーラー:美しいトランペットが鳴り響くところ
                 (「子供の不思議な角笛」から)
シューマン:ぼくの美しい星
        (「愛の相聞歌(ミンネシュピール)」op.101から)
      世捨て人(「3つの歌」op.83から)
マーラー:原光(「子供の不思議な角笛」から)

【Ⅱ】死、人との繋がりを失う悲しみ
シューマン:夜の歌(「リートと歌」第4集op.96から)
マーラー:この世の生活(「子供の不思議な角笛」から)
     なぜそのような暗いまなざしで
                  (「亡き児をしのぶ歌」から)
     おまえのお母さんが入ってくるとき
                  (「亡き児をしのぶ歌」から)
シューマン:ものうい夕暮れ(「レーナウの6つの詩」op.90から)
マーラー:私はこの世に忘れられ
          (「リュッケルトの詩による5つの歌曲」から)
シューマン:終わりに(「ミルテの花」op.25から)

【Ⅲ】兵士、軍隊
シューマン:兵士(「5つのリート」op.40から)
マーラー:死んだ鼓手(「子供の不思議な角笛」から)
シューマン:2人の擲弾兵(「ロマンスとバラード」第2集op.49から)
マーラー:少年鼓手(「子供の不思議な角笛」から)

アンコール:シューマン: 歌曲集「ミルテの花」op.25から 献呈

シューマンとマーラーを交互に歌うという実に凝った構成のプログラ
ム。ある意味意欲的とも思える試みなのに、オペラシティの客席は、
半分も埋まったかという不入り。これが3・11の影響であるのかどうか
はわからない。ただし、この日の客の集中度は高くて終演後の拍手も
人数以上に盛大なものだった。

まずはマティアス・ゲルネの完成した声と表現に感心する。下から上
までムラのない美しいバリトンの声質に申し分のない声量。それらの
すべてを完璧にコントロールして表現に結び付ける知性……。人間の
声の表現がこんな高みにまで到達するものかと、3階席の片隅で素直
に驚いている自分がいたのだ。

この先も続けようという、この試みだが、いくぶんか気負っていたか
と感じたのは、マーラーのいくつかの曲のテンポの重さだった。ただ
し、そのんなテンポもまた客席の我々に集中をもたらしたのである。

プログラム最後の『少年鼓手』の最初と最後、譜面係にピアノの弦を
押さえさせて、不気味な効果音を出していた。最初は見えなかったの
で、どうやって音を出しているのかと思ったのだが、確かに効果的だ
ったと思った。

アンコールで『献呈』のピアノが流れてきた時は、ようやく緊張を解
いてくれたような気がしたのである。

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