鬼話§ロリン・マゼール&東京交響楽団

東京交響楽団創立65周年記念特別演奏会は、ロリン・マゼールを指揮
者に呼んだ一夜。会場は我が家からトンネルを3つくぐり抜け、小田
急線で5つ目、新百合ヶ丘はテアトロ・ジーリオ・ショウワである。

ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 作品21
マーラー:交響曲第1番 ニ長調「巨人」


マゼールは今年で御年81歳だが、何という矍鑠ぶりかと、3階席てっ
ぺんから驚きつつ見下ろしていたのだ。

1番、1番というプログラム1曲目のベートーヴェンは、やや軽快さ
に不満が残った。1367席馬蹄形の劇場然とした小ぶりな空間で、第一
ヴァイオリン12、第二10、ヴィオラ8、チェロ6、コントラバス4の
編成は重すぎた。もう1プルト落としたくらいが音楽にも透明感が出
てきて、後半の大編成マーラーとの対比がつくのではないかと思った
のだが、それはマゼールの好みではないということだろう。

残響こそ不足しているが定位良好なので、音楽の構造が手に取るよう
に聴き取れる、そのおかげでアンサンブルがよくわかったのは収穫。
そんなベートーヴェンの聴き方をしたのだった。

後半メインプロのマーラー、これはマゼールの“けれん”絶賛満載の
演奏で、インテンポで進むかと思えばぐいっとテンポを落とし、さし
ずめ歌舞伎の見得のような趣きだったりして、実はそんなマゼールの
音楽は好きでなかったりするのだが、この日の演奏をに関しては彼の
解釈を高みの見物で楽しんだような気がする。

舞台上段、打楽器列の下段にホルン8本を横一列に並べた視覚効果は
おもしろく、ベルアップや様々な奏法を眼で楽しめたのは収穫。通常
はホルンのみが起立して演奏するフィナーレでは、トランペットとト
ロンボーン一人ずつも起立して演奏するという、マーラー自身がリハ
ーサルにあたってリクエストしたことが実現されていた。こういうの
もまたマゼールの面目躍如というところか。

マーラーの交響曲第1番を初めて聴いたのは1976年頃のことで、オー
ケストラは同じく東京交響楽団というのも何かの因縁だろうか。まだ
マーラー・ブームは――おそらく――到来はしておらず、35年近く前
の東響の演奏も、自分自身の耳慣れないこともあって、ぐじゃぐじゃ
にしか聴こえなかった。それからすれば何という様変わりだろうか。

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