筒話§オルガン演奏会とその終演後[下]

[承前]

垂直のはしごを登りきったところが“神の座”である。最長の低音パ
イプ群のてっぺんの位置にいるのだ。ネットでいくぶんか視界は悪い
が、その席にあるホール空間が何やら神々しくも見えたりして……。

そんな4階には作業台のようなものがあり、その上には無造作に切り
取られた金属片が散乱していた。聞けば、調律のために削り取ったパ
イプの一部で、手にしてみたらこれが柔らかい。金属パイプは錫と鉛
の合金で、要するにパイプ本体“ハンダ”なのである。

というところで胎内の旅も終わりに近づいてきた。降りながら、そう
いえばと演奏の最中に浮かんだ疑問があったので聞いてみた。

それは、作曲家がオルガンのために作曲するにあたって、ストップを
細かく指定するのだろうかというものだった。そもそもオルガンひと
つひとつが異なるストップ構成だから、作曲家に指定されてもストッ
プが存在しなければ困るだろうというものなのだが……。

答えはというと“基本的に備わっているストップを使ったお約束指定
はあるが、それ以外は演奏者のストップワークである”であった。考
えてみればバッハのオルガン曲の楽譜を見ても、ストップの指示など
はなく、これすべて鍵盤に向かう奏者自身の手で音色を生み出さねば
ならないのである。それがオルガン演奏の妙味でもあるわけなのだ。

オルガンから離れる最後のところで目に留まったのが壁際のスイッチ
だった。案内してくれた人がスイッチを切ったので、何気なく尋ねた
ら何とそれがオルガン全体の電源を司るメインスイッチなのだった。

みなとみらいのオルガンを製作したのはアメリカのC.B.フィスク社
という会社で、案内人に言わせるとそのあたりがヨーロッパのビルダ
ーと違う……ある意味合理的な部分ということなのだそうだが、まあ
そんなところをオチにして、オルガン胎内ツアー話はおしまいです。

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