遊話§魔笛~ピーター・ブルック~[下]

[承前]

ピアノ伴奏は、魔笛の音楽だけでなくピアノソナタやピアノのための
幻想曲を演奏したり、もちろんモーツァルトの音楽だから違和感など
はない。不満の多い舞台だったが、秀逸だと思ったのはパパゲーナが
年老いた格好でパパゲーノに迫るくだりで、彼女が歌ったのはモーツ
ァルトの歌曲『老婆(Die Alte)』だったが、風刺の効いた選択に感心
したのである。

少しばかり感じることがあったとすれば、リヒャルト・シュトラウス
の『影のない女』との関連性ということだろうか。もちろん、台本を
書いたホーフマンスタールも作曲したシュトラウスも“次のオペラは
『魔笛』を下敷きにして……”と明言していることだから、声高にあ
れこれ云々するほどのこともないのだが……。

登場人物にしてもパパゲーノとパパゲーナはバラクとその妻に、タミ
ーノとパミーナは皇帝と皇后、ザラストロは本編に登場しないカイコ
バートとして、そして夜の女王は乳母に……という見立てが仄見えた
のだった。

パパゲーノとパパゲーナの二重唱が、バラクとその妻が軛から解放さ
れた喜びの歌として聴こえたというのは、何かの幻だっただろうか。
夜の女王がザラストロに手を差し出されたことで、このオペラが和解
の劇であることを理解することができたような気がするのだが……。                        

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