湯話§タンホイザー~東京春祭~[上]

[承前]

というわけで、花見客でごったがえした日曜日の上野は東京文化会館
で東京・春・音楽祭最終日『タンホイザー』を観てきた……というか
聴いてきた。演奏会形式である。

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指揮:アダム・フィッシャー
タンホイザー:ステファン・グールド
エリーザベト:ペトラ=マリア・シュニッツァー 
ヴェーヌス:ナディア・クラスティーヴァ
ヴォルフラム:マルクス・アイヒェ
領主ヘルマン:アイン・アンガー
ヴァルター:ゲルゲリ・ネメティ
ビーテロルフ:シム・インスン
ハインリッヒ:高橋淳
ラインマール:山下浩司
牧童:藤田美奈子

管弦楽:NHK交響楽団(コンサートマスター:ペーター・ミリング)
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:マティアス・ブラウアー

まずもって、初めてきくアダム・フィッシャーの指揮に感心した。オ
ペラに通暁し、痒いところまで手が届く、そして、オケから自分が望
む音を取り出す能力……かなりN響も喰らいついてはいたが、フィッ
シャーの音楽の引き出しを埋め尽くすまでには至らなかった。

だが、フィッシャーの技量は先月新国で聴いた『さまよえるオランダ
人』の指揮者(トマーシュ・ネトピル)とは力量の差があまりにもあり
過ぎると感じた。ネトピルが大雑把なデジタル的音楽処理しかできな
いのに対して、フィッシャーはアナログ的になめらかな音楽表現がで
きて、その結果として様々な音形が浮かび上がったり、木目細かい指
示でダイナミックレンジのコントロールを思いのままにしていたので
ある。まさにカペルマイスターと呼ぶにふさわしい存在だったのだ。

この日、ゲスト・コンサートマスターを務めたペータ・ミリングは、
シュターツカペレ・ドレスデンのコンサートマスターを定年で引退し
たが、毎年N響に招聘されているようである。年齢的なものか、音程
に危ういところがあって心配になったが、上半身を使ってオーケスト
ラ全体をも引っ張ろうとする姿は健在といえるだろう。

こうした手練の力を得て、タンホイザーの音楽が生き生きと繰り広げ
られたのだった。
                            [続く]

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