板話§四月花形歌舞伎~仮名手本七段目

[承前]

六段目のあばら家から一転して、七段目は祇園一力の場と鮮やかな場
面の転換となる。

染五郎の由良之助、福助のお軽、松緑の平右衛門。さすがに染五郎や
松緑では場を保ちきることが難しいということがわかっていて福助の
お軽ということがわかる。これが仮に菊之助のお軽という組み合わせ
だったら、年齢的なバランスはともかく、舞台のあり様が薄っぺらく
なってしまうのだろうと想像した。

大歌舞伎で、吉右衛門や仁左衛門が何気なく芝居をし、台詞を話して
いるように見えて、それは長い年月の積み重ねで培われてきたものだ
ということが痛いほどわかる、それほどに歌舞伎の様々な役の性根を
つかむのは大変なのだ。

染五郎、来年で40歳……あと10年したら、どのような由良之助を演じ
るものだろうか。松緑の平右衛門は、姿こそ足軽風情でいいのだが、
相変わらず口跡に難あり。というわけで、福助をお軽にして“重し”
にしたのは正解だったと思うのであるが。

平右衛門が由良之助のために頼んだ布団を持ってきた仲居おつるに拍
手が出たのは1932年生まれで今年80歳となる中村歌江だったからであ
る。小山三といい、こういう人には長く長く舞台に立ち続けてもらい
たいものだ。

七段目が終わったところで席を立った。何度か観た討入りの場面だが
どうも、立ち回りばかりが悪目立ちして、それまでの芝居との乖離が
顕著に感じられるようになったので、思い切って帰ることにしたのだ
が、おかげで自宅までの遠路を30分ほどは早く帰ることができた。

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