悼話§D・F=ディスカウさん(歌手)

まさに声楽界の巨人、超人である。リートといえばディートリヒ・フ
ィッシャー=ディスカウであると言われていた時代から聴き始めてい
る。まさに唯一無二の男声リート歌手だったのである。

初めて聴いたのは1977年のN響定期で、サヴァリッシュが指揮をした
シューマン『「ファウスト」の情景から』だった。音楽そのものにな
じみがなかったので、ディスカウがどうであったか……記憶はないの
だが、彼の横で歌っていた日本人男性歌手(特に名を秘す)と見比べた
時、あまりに歴然とした体躯の違いに勝負あったと思ったのだ。

その後、日本でリート・リサイタルを3回、ミュンヘンで1回聴く機
会があった。冬の旅が1回、詩人の恋が2回、後は白鳥の歌を聴いた
のだが、なぜか実演での印象が薄くしか残っていない。彼ほどに多忙
を極めた歌手であるから、あるいは実演のムラも少なくはなかったと
想像してしまう。

いずれにしても、20世紀の半ば過ぎに現れて、それまでのリート歌手
の概念を一新させたことで、作曲家における大バッハと同様、ディス
カウに流れが集束し、20世紀末から21世紀にかけて活躍する歌手を生
み出したと言っても過言ではないと思うのだ。

マティアス・ゲルネ、イアン・ボストリッジ、そしてクリストフ・プ
レガルディェンといった3人に代表されるような新たなリートの地平
を築くような歌手に連なっていったのである。

最後に、追悼として“ディスカウ三絶”を挙げておこう。フルトヴェ
ングラーと共演したマーラー、リヒターとのマタイ、そしてベームの
フィガロは、これはもう余人をもって代えがたい録音なのだ。

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