懐話§昭和三十年代~ちゃぶ台~

[承前]

トイレ以外にプライベートな場の存在しなかった今はなき実家だが、
八畳と四畳半の部屋に家族数人が寝起きしていたのだ。もちろんだと
いうか、風呂も銭湯を利用していた。

そんな手狭な家の中で使われていたのが“ちゃぶ台”である。4本の
脚を折り畳んで部屋の隅に立てかけたところに家族の布団を敷いて、
あぁっという間に寝室に変身するのである。そこに最多で9人が寝て
いたのでありますよ。

狭いがゆえの知恵と言うか工夫ということだが、プライバシーがゼロ
であることに変わりはなく、気づくことはなかったが、たとえ子供で
あってもストレスはかかっていたはずで、結果として家を出たいと強
烈に願望するようになった遠因と言えなくもなかろう。

こればかりは、物心ついたときから個室をあてがわれた人達には理解
できない部分のはずである。だから、家を出る18歳という年齢になっ
ても個室がなかったというのは、自分自身にとっての小さなトラウマ
であるような気もするのだ。

ところで、ちゃぶ台といえば劇画『巨人の星』で、父親の星一徹が激
昂して夕餉の膳を引っくり返すシーンが有名だが、あれはたった一回
しか行なわれていないということを最近になって知ったのである。
                            [続く]

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