偽話§天日坊~コクーン歌舞伎~[下]

[承前]

さて、その他についてまとめておこう。思いがけなかったのは、盗賊
の首領地雷太郎を演じた獅童の弾けっぷり。本来の歌舞伎は“ヘタ”
なのではあるが、今回のような芝居では彼のよさが生かされたという
気がする。役をうまいこと自分のものにしたと言うべきだろう。

七之助の盗賊人丸お六も、崩れることなくきっちりと演じて好感度が
高かった。これがもし福助だったら身も蓋もなく崩れたような気がし
てならない。

主役三人がぐっと若返ったことで、この芝居が成功したのだと思う。
『三人吉三』でもあり、あるいは『明日に向かって撃て』のようにも
思われる今回の逃亡劇のスピーディさは世代交代に負うところが大き
いということなのだ。

その他、初めて聞く名前だったが真那胡敬二、近藤公園といった歌舞
伎以外の役者の粒も揃っていたし、長いこと“少年”だとばかり思っ
ていた巳之助や新悟の頑張りも目についた。最後になったが、亀蔵や
萬次郎という個性的な脇役も忘れてはならない。

伝統的な歌舞伎の下座音楽はなく、附け打ちが下手に控えるのみ。そ
の他、打楽器と数本のトランペット、ギターという洋楽器がハードボ
イルド・タッチで効果的に働いていたが、何年か前の『三人吉三』で
使われた椎名林檎のような温いセンチメンタルに陥ることなく、終始
舞台にアクセントを付けていたのも印象的だったのである。ただし、
相変わらず電気増幅の音量が大きすぎるのは改善の余地ありだった。

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