偽話§天日坊~コクーン歌舞伎~[上]

もう150年も上演されていないという、黙阿弥作の『天日坊』を、
宮藤官九郎が翻案リライトしたのを串田和美が演出してという、コク
ーン歌舞伎を観てきた。主役の天日坊を演じるのは中村勘九郎。

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前週の『桜の園』に引き続き、期せずして昔の戯曲を翻案した舞台を
観ることになったのは偶然のことだろうか。というわけで、2週続き
でなかなかおもしろい観劇体験をしたのだった。ただし、おもしろさ
という意味では、断然『天日坊』に軍配を上げたい。2009年12月の大
歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』で壮絶な失敗をしたクドカンが、ま
ず第一の功労者である。

黙阿弥得意の“○○、実は△△”がてんこ盛りになっている、膨大な
台本――原作のままでは上演に2日かかるらしい――を3時間ほどに
切り詰めてまとめあげ、自分のフィールドに引っ張りこめたことで、
公演の成功が約束されたのではなかろうか。

正直なところ、ここ何回か観た串田演出のコクーン歌舞伎は、煮詰ま
ってしまったような印象を持ってしまっていた。それまで、よくも悪
くも中村勘三郎の個性で固まったがゆえの状況であったのが、疲労を
きたしていたのだということがよくわかった。

串田和美の演出は、これまでと劇的に変わるところはなかったのに、
何が変わったかといえば、それは芯を務める役者の若返りと、それに
もう一つ挙げてみようと思うが、明日の心である。
                            [続く]

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