古話§中野クラシックが高円寺に

大学時代足繁くに通った、いくつかのクラシック喫茶の一つが中野駅
北口ブロードウェイ手前のサンモールの路地を入った“クラシック”
という店だった。

1930年開店だから、通っていた頃でも既に40年以上の歴史があり、そ
れを証明するように店の外観は見事にくたびれていたのである。さら
に中に入れば、複雑な層を為している客席フロアは微妙に傾斜してい
て、平衡感覚が狂いそうになったのだ。

メニューにあるのはコーヒー、紅茶にオレンジジュース。コーヒーは
いかにも典型的な昔のそれであった。それよりもおもしろかったのは
水のコップがワンカップ清酒を使っていたり、ミルクピッチャーの代
わりにマヨネーズのキャップを使っていたということである。

店主のMさんという……我々の時代には既に老境の人だったが、スト
ライプのズボンに帽子をかぶった、昔のモダンなスタイルを今に伝え
るような雰囲気だった。

店に入り、コーヒーを注文して、小さな黒板にリクエスト曲を書く。
自分の曲が流れるまで、30分くらいの時もあれば2時間以上かかる時
もある。その間を1杯のコーヒーで粘るのである。

そんな中野クラシックが閉店したのはMさんの死後、2005年のこと。
元々は高円寺に店があったというその古巣に、かつて店で働いていた
スタッフが、クラシック名残の設えあれこれを使って“再開”させた
ようだ。

もちろん建物まで移築したわけではないが、少しでもあの雰囲気の残
り香を感じることができれば御の字である。

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