築話§九月大歌舞伎昼の部~秀山祭~

朝、起きた時から雨降りの肌寒い日曜日に新橋で昼の部を観てきた。

『菅原伝授手習鑑』寺入り~いろは送り
『河内山』上州屋質見世~松江邸広間~書院~玄関先

前述したように、染五郎休演により松王丸を吉右衛門、源蔵を梅玉と
配役変更になっての上演。染五郎で観たかったという思いは強いが、
吉右衛門の松王のすばらしさには、これでよかったのかという思いも
持ってしまう……どちらをと選ぶこと自体がナンセンスでもあるし。

所作の一つ一つ、台詞の一つ一つが考え抜かれ、淀みなく吉右衛門の
松王が舞台上存在するということなのだ。歌舞伎を観始める以前は、
25日の興行を毎日同じ演目を繰り返し演じて飽きないだろうかなどと
考えたこともあった。それが間違いだと気づいたのは観始めてさほど
間がない頃だったと思う。

毎日演じることで見えてくるものがあり、前日うまくいかなかったと
ころを工夫するとかして、それらを取り込むことで役が徐々に自分の
物になっていくということなのだ。

深々とした哀しみを湛えた吉右衛門の松王は、それだけで一幅の絵画
だった。

そんな重苦しい役の後、1時間も経たずに演じるのが河内山。豪快さ
と機知に富む愛敬。ここでも吉右衛門の融通無碍と、恰幅の大きさを
堪能することができて満足。

終演は15時前と、のんびり芝居の後を銀座から新宿とぶらぶら歩き、
夕食も済ませて20時前には帰宅できたのである。

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