懐話§昭和三十年代~井戸~

[承前]

昭和三十年代、町や村ばかりでなくて市と呼ばれるような中にも普通
に井戸があった。我が生家は三軒長屋で、そこにも共同管理の井戸が
設置されていたのだ。

さすがに表通りにはなかったが、一歩路地を入っていくと、あちこち
に井戸があったことを覚えている。我が家のように3軒で使っている
ところもあれば、10軒くらいで一つの井戸を使っている町内もある。

10万人規模の人口を持った街中にあって、我が長屋もそうだったが、
上水道が引かれていなかった町内も少なくはなく、そういう意味では
井戸が重要なライフラインでもあったのだ。

我が家に上水道が引かれたのは1964年と三十年代最後期にあたってい
たが、その後も井戸は使われ続けたのだった。上水道以前の台所には
大きな甕があって、中身が少なくなると家人が大きなバケツを持って
いって井戸水を追加するのである。

3軒くらいで使っている井戸だから、まさに“井戸端会議”のような
ことが日常で、幅広くとった浅くて短い水路で母親達が洗濯をしてい
る様子は記憶の中にあるのだ。

井戸水のいいところは水温が一定しているおかげで冬温かく、夏冷た
いということ。それで大きなバケツに西瓜を入れて冷やしたりという
懐かしい風景もまた自分の中に大きく残っている。
                            [続く]

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