放話§十一月顔見世大歌舞伎昼の部

昼の部は2本で『双蝶々曲輪日記』から井筒屋、難波裏、引窓と『文
七元結』である。南与兵衛(十次兵衛)を務める仁左衛門は体調が優れ
ず、初日こそ出演したものの、この日も休演だった。代役は梅玉。

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もちろん仁左衛門で与兵衛が観られればよかったが、芝居全体を通し
てのアンサンブルは2週間を過ぎていたおかげで申し分なく締まって
いた。おかげで最初から最後まで存分に楽しむことができたのだ。

しかも、戦後初めて東京で上演される『井筒屋』が置かれたことで、
『引窓』へと続く流れが理解できたのはありがたい。そんな舞台を、
戦後一度も東京で上演されなかったとは、いかなる事情なのだろう。

そつのない梅玉、やや薄味と感じた左團次の濡髪に時蔵の女房お早と
いった中で、竹三郎演じる母お幸が濃いめの味付けで舞台を引き締め
たのである。

続く『文七元結』も菊五郎のサラリとした長兵衛を中心に、息子菊之
助が程よく絡んで後味がよかったこと。先刻承知である時蔵のお兼、
團蔵の角海老藤助、東蔵の和泉屋清兵衛と、手練の舞台を堪能した。

不満を一つ挙げるなら、魁春の角海老女将お駒にもう少し廓の艶っぽ
さのようなものがにじみ出てくれればよかったとは、晩年の芝翫が演
じたお駒が廓の女将としての完成度があまりに高かったからである。

【去年の今日】週話§日曜呟き~晩秋の休日~

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