懐話§昭和三十年代~防虫剤~

[承前]

色々と思い出したことがあるので“昭和三十年代話”をまとめて書い
ておく。生を享けた田舎町では、この時期に“えびす講”が2日間に
わたって行われる。

時期的には“酉の市”にあたっていて、お宝の飾り物とか熊手の縁起
物が売られ、様々な屋台も並んで、神社を中心に賑やかな縁日なので
ある。子供の頃は、お参りそっちのけで屋台を飽かず眺めたものだ。

えびす講と期を一にして、たんすにしまっていた、冬物の厚い上着が
登場する。早い年では空っ風も吹き始めるから、たんすから出したば
かりの上着を着てお参りに行くことになる。

かくして、雑踏の中は防虫剤の匂いが漂うとかいう以上に“充満”し
ていたという記憶が強烈に残っているのだ。まさに“冬の始まり”の
香りなのだった。

そんな、樟脳とかナフタリンといった匂いに癖のある防虫剤も、いつ
の間にか姿を消し、今や薬剤の形も見えない小さなプラスチック製の
パックという存在になってしまった。いつ薬効が切れてしまったかの
お知らせとして“有効期間終了”の文字が浮かび上がるのである。
                            [続く]

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