頌話§ベートーヴェンの第九を考える

いつもながらの巡回ブログを読んでいたら、年末に東京で行われるベ
ートーヴェン第九の演奏会は延べ50回なのだと知った。ホールキャパ
を大雑把に2000人として10万人が第九を聴くことになるのだ。

翻って1824年、ウィーンで第九の初演が行われた時の聴衆は何人だっ
ただろうかと考えた。おそらく数百人程度と想像されるが、初演が行
われたケルントナートア劇場のキャパシティがどれほどのものだった
か、調べてみたもののわからずじまいだったが、多めに見積もっても
せいぜい1000人単位ではなかっただろうか。

極東の日本という国で、12月一か月の間に演奏される第九の回数を、
天国のベートーヴェンが知ったら間違いなく眼を回して卒倒するので
はないだろうか。そして呟くのだ……

“なぜ、ヨーロッパから遠く離れた、私からすれば、
辺境同然の日本という国で、私の、それも第九ばかりが”


……19世紀前半という時代は、実演以外にフルオーケストラの音楽を
聴く機会など存在しなかったのだから、いったい何人の人間が第九を
聴くことができただろうかと思うのである。ベートーヴェン存命中、
それほど再演の機会は多くなかったはずで、万単位の人間が耳にした
とは考えにくい。

19世紀半ば頃、蝋管式蓄音機が発明されたものの、実際に多くの人が
再生音楽を楽しめるようになったのはSPレコード以降、20世紀に入
ってからのことである。

様々な音楽媒体が生まれては消え、CD以降の我々は、手の平に乗る
ほどのハードディスクさえ持っていれば、CD1000枚など楽々と収容
し、聴いて楽しむ環境にあるのだ。

かくしてCDの販売が激減しているという、何とも矛盾した御時勢に
我々は存在しているのである。

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