悼話§成田屋 市川團十郎さん(十二代目)

我々は、2か月の間に、歌舞伎界一の集客力を誇る人気役者と、歌舞
伎界一番の大名跡を失ってしまった。歌舞伎座の開場まで2か月を切
ったこの時期に……言葉が見つからない。

2010年4月の歌舞伎座閉場式で、菊五郎、吉右衛門、仁左衛門、勘三
郎、三津五郎、梅玉、團十郎、幸四郎という立役8人が『都風流』
踊るのを観た。五十代から六十代の、まさに盛りの役者のうち、3年
経たずに2人もいなくなってしまうとは思いもしなかった。

口跡もけっしてよくはなかったし、むしろ不器用な役者という印象だ
ったが、自分のできることを丁寧に務めたのが成田屋市川團十郎とい
う人柄なのだろう。

これぞ團十郎!というのだったら『助六由縁江戸桜』の助六を迷うこ
となく選ぶだろう。何よりおおらかな芸風をバックにして、揚幕から
花道に出ての匂い立つような20分に及ぶ一人舞台は、当代一と言って
間違いではない。

勘三郎だけでも巨大な損失だったのに、團十郎まで身罷ってしまった
がために、立役の層が一気に薄くなったようである。次に続く世代の
成長が新しい歌舞伎座を支えていかねばならないという流れ場が、い
や増しに高まっていくようである。

巨大な空白二つをどうやって埋めていくのだろう。

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