即話§シューベルト最後のピアノ・ソナタ

春分の日の午後遅く、特にすることもなかったので、シューベルトが
書いた最後のピアノ・ソナタ3曲をまとめて聴いた。

ピアノ・ソナタ第19番 c-moll D.958
ピアノ・ソナタ第20番 A-Dur D.959
ピアノ・ソナタ第21番 B-Dur D.960


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演奏しているのはアルフレート・ブレンデル40年以上前の録音だから
彼が四十代で、気力、体力、知力、技術が揃って充実していた時期に
あたっていたといえるだろう。

そもそもシューベルトのピアノ・ソナタは、長いこと手を出さずにい
た。30年以上前に、リヒテルが中期のソナタを弾くリサイタルに出か
けて聴いているが、音楽の形がまるでつかめずに撃沈したことも手伝
っていたようである。

結局、聴き始めた時には五十代を過ぎていた。シューベルトがこれら
3曲を書いたのは1828年、31歳にして晩年という頃なのだった。その
前年にベートーヴェンが57歳で死んでいることが、彼の作曲家人生に
どのような影響を与えたのかはわからない。

ベートーヴェンが50歳になったところで書いた30番から32番のソナタ
は、人が聴くことを考えていなかった……聴くたびに、そんな思いを
抱かせる音楽だと思っているが、それに比べると人が恋しいと想像で
きるシューベルト最後のソナタは、そのまま“人恋しい”と呟いてい
るがごとくに聴こえてしまう。

ベートーヴェンの峻厳さを中和するかのごとく、シューベルトのソナ
タがひっそり寄り添っているような気がする。そんな3曲と3曲が、
我が身にとっては老成してからの心の拠りどころの一つであるような
気がしてならない

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