親話§マイスタージンガー~東京・春~[下]

[承前]

休憩を入れて5時間半という長丁場ゆえに、N響も抑え気味にスター
トしたものだから、一幕はどことなく乗り切れないままに終わり、や
や疲れが見えた三幕はヘロヘロ感を漂わせつつ、最後は火事場の馬鹿
力でフィナーレを迎えたのだった。

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コーラスも申し分なく歌ってくれたが、二幕最後の乱闘場面をもっと
クリアに歌ってほしかった。通常の舞台上演だと、何を歌っているの
かわからずのカオス状態になってしまうので、こういう機会にきちん
と聴いておきたかったのだが。

それにつけても演奏会形式のマイスタージンガー上演は、いささか無
理があると痛感した。何回も上演を観ている我々は場面場面のイメー
ジを思い浮かべることができるが、初めて臨んだ人達には具体的なイ
メージがつかめたかどうか……。

例えば第三幕、先日深夜の乱闘で痛い目に遭ったベックメッサーが、
ザックスの仕事場を訪れ、ザックスが書き写したワルターの歌の紙片
を見つけるまで、舞台上には何の動きもない。実演の舞台であれば、
腰をさすったり、足を引きずったりと音楽に合わせたマイムが展開す
るので観客は何が起きているのかを具体的に理解できるのだ。

最後に、字幕が最悪であったことを書いておきたい。通常は舞台の上
手と下手にLED縦書き表示の字幕を使うところ、東京の春では、舞
台後ろのスクリーンに字幕を表示するのだが、これが情報量が多過ぎ
るのと見にくいのとで、時折見るにしても疲れてしまった。おまけに
振り仮名まで付けているのを見るに至っては明らかに“やり過ぎ”と
断じざるを得ない。来年以降の改善を切に望むものである。

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