悼話§ヴォルフガング・シュルツさん

記憶に残っているのは、1989年ウィーン国立歌劇場日本公演『ランス
への旅』の舞台上で吹いたソロである。

シュルツのフルートは馥郁として輝かしく、そこに華やかな色気まで
醸し出され、まさに絶品といっても言い過ぎることはなかったのだ。
それは楽器でありながら人間の声のような歌心にあふれた美しい音楽
なのだった。

後日、もう一度『ランスへの旅』を観たが、その時は別のメンバーが
ソロを吹いたものの、シュルツのような魅力は感じ取れず、同じウィ
ーンフィルのメンバーでも格の違いを思い知ったのだ。

もう一つは、1994年にクライバーが振った『ばらの騎士』の時で、第
一幕の技巧的なソロ。一点の曇りもなく上昇音型が鮮やかに駆け上が
った後は音が自在に踊っていた。細かい音符を猛スピードで吹いてい
かねばならないところを、シュルツは完璧なテクニックで危なげなく
聴かせてくれたのである。

フルートを吹いたことがある人間として、最も尊敬するフルーティス
トはオーレル・ニコレだが、好きなフルーティストとしてシュルツの
名前を並べることに躊躇することはない。

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