愉話§呑藝春秋[2]ハイボール奇譚

[承前]

ハイボールの流行が定着したということができるだろうか。ずいぶん
手軽にあちこちの店で呑ませてくれるようになったと感心している。

一度書いたことがあるような気がするが、もう20年近く前のこと。山
手線沿線のビジネスクラスに毛が三本というレベルのバーにぶらりと
入って、気まぐれに「ハイボールを」と注文したら、たぶん二十代と
思しきバーテンダーに「すいません、それは何ですか?」と聞かれた
ことがあった。

あの時代――昭和末期から平成にかけて――ウィスキーの消費量は激
減していたはずである。酒を呑み始めた1970年代半ば頃といえば、ス
ナックバーの水割り全盛期で、さんざん水っぽいウィスキーを呑まさ
れたものだ。

そうこうしているうちに、酒の味を少しばかり覚えた気になった頃、
水割りには嫌気がさしてしまい、オン・ザ・ロックでウィスキーを呑
む時期を経てハイボールに落ち着いたのである。ところが、機を一に
してハイボールの凋落が始まった。

そしてバーテンダーですら「ハイボール……何それ?」という不遇が
20年ほども続いたのである。今やハイボールは、おしゃれな酒の主役
の一翼を担うようにまでなり、たこ焼きチェーンが、たこ焼きを肴に
ハイボールを呑ませるという時代を迎えているのである。
                            [続く]

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