棲話§自然の歩留まり~イワツバメに~

尾瀬の山小屋でアルバイトをしていた時、雪が溶けた5月頃から軒下
にイワツバメが営巣する様子を眺めることができた。

ほどなくヒナが生まれて、しばらくすると飛べるようになっていくの
だが、飛べるようになる直前に巣から地面に落ちてしまう運の悪いヒ
ナツバメもいたりする。

最初に見た時は何とかできないかと考えていたのだが、それを見透か
したように「何もしてやれないでしょ、親鳥も巣に戻してやれないの
だから、人間にはどうすることもできないのよ」と言われたのだ。

その時の自分は、まさに人間の視点で眺めていたわけで、自然界の視
点というわけではなかったことに、今さらながら気がつくのである。

生命あるものは生かされるべきだという発想とは別に、自然界には不
本意ながら生を全うできない存在も数限りなくあるということに思い
至らなくてはならない。

種の保存を本能の第一義とする動植物の中でも弱小な種類は、数多く
産卵をしたり種を作り出すことで、次世代への歩留まりを可能な限り
大きくするのだ。食物連鎖の下位に位置すればするほど、それは膨大
なものになっていくのである。

食物連鎖とも天敵とも縁の薄い我々人間には窺い知れない“自然界の
冷徹な算術”が存在するように思えるのだ。

【去年の今日】連話§ワタシの酒肴[57]バターコーン

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