懐話§昭和三十年代~タイプライター~

[承前]

昭和三十年代からは30年ほどこちらに近い時代の話である。

大学で教えている知り合いが講義の中でタイプライターについて学生
に聞いたところ、50人のクラスで英文タイプを使ったことのある人間
は1名だけ、実物を見たのが数名で、残りは“何それ?”という結果
だった。それを聞いて、さもありなんと思いつつ、今世紀初めでも、
ほぼ似たような結果だったのではと思ったのだ。

英文タイプライターが今のパソコンのように普及していたわけでない
のは当然すぎる話で、英語を生業にしているとか仕事上の必要があっ
てという以外、普通の大学生が所有する必然性もなかったのである。

ところが、なぜか中学校程度の英語がよくできたということを勘違い
した父親が英文タイプを買ってきたのだ。その当時、タイプライター
といえばオリヴェッティというくらい、洒落たデザインをしたレッテ
ラ32という青いボディの製品だった。

それでまあ、買ってもらったものだからポツポツと打ち方を覚えては
みたが、他に何か活用できるわけでもなく……という時間が過ぎて、
80年代半ばに会社でワープロをいじるようになったら、そんな昔の手
なぐさみが役に立って、何の抵抗もなく打ち方を覚えてしまい、後々
パソコンに移行してもタイピングに困らなかったのはありがたい。

手に職ではないが、人間覚えておいて損になることはないのである。
                            [続く]

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