惜話§夏季休暇~コンセルトヘボウ[下]~

[承前]

画像

というわけで“知らない曲”は弦楽合奏で15分ほどの重層的な音楽が
耳に優しい。続く“苦手な作曲家”のピアノ協奏曲はスリリングな体
験だった。オケもピアノもよく鳴って、意外にも七分ほどの入りとい
うベルリンの聴衆の反応も盛り上がってきた。そんなブロンフマンの
アンコールはショパンの練習曲集から1曲という意表をついたもの。

さて、この日一番の聴き物は休憩後のロミジュリ組曲。緩急巧みに振
るガッティの指揮にコンセルトヘボウが十全の能力を発揮、眼も眩む
40分の音楽体験だった。極彩色で艶やかな音色、ダイナミックレンジ
の幅も圧倒的で、まさにスーパー・オーケストラそのものがそこに。
これほどな耳の贅沢はそうしばしばあるものではなく、終演後も二人
して“すげえ!”の連発なのだった。

アンコールが始まって、これまた二人“まぢっすか!”と顔を見合わ
せた。意表のつき過ぎとはこういうことを言うのだと思うのだが……

ニュルンベルクのマイスタージンガー第3幕の前奏曲

……だったんですよ、奥様! これに先立ってガッティはザルツブル
ク音楽祭でマイスタージンガー全幕の指揮をしたばかり。いわばザル
ツブルク土産を披露して見せたのだが、これもまた深いニュアンスに
富んだ演奏。低音弦から始まる弦楽器に続くホルン四重奏の何と深々
と美しいアンサンブルだろう。我々夫婦の眼前には、朝まだきの部屋
で物思いに耽るザックスの姿が徐々に現れてくるのだった。

帰り道々“しかし、普通は第1幕の前奏曲なのに、そうくるものかね
……あんな演奏やられたら、最後まで聴きたくなるじゃないか、これ
じゃあ蛇の生殺し……”と、これまた贅沢な文句を垂れつつ、ポツダ
む広場までぽてぽてと歩いて地下鉄の駅へ。
                            [続く]

《オーケストラのトピックス一覧》

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック