川話§ジャン=ギアン・ケラス~バッハ~

先週土曜日の午後、オペラシティ大ホールでジャン=ギアン・ケラスの
チェロ独奏によるバッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏を聴いてきた。
2回の15分休憩を挟んでの曲順は以下の通り。

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無伴奏チェロ組曲 第1番 G-Dur BWV1007 
無伴奏チェロ組曲 第4番 Es-Dur BWV1010 

---休憩---

無伴奏チェロ組曲 第3番 C-Dur BWV1009 
無伴奏チェロ組曲 第5番 c-moll BWV1011 

---休憩---

無伴奏チェロ組曲 第2番 d-moll BWV1008 
無伴奏チェロ組曲 第6番 D-Dur BWV1012

[アンコール]クルターク:シャドゥ

第一印象は、不思議なバッハを聴いたなあということ。それは、これ
までに培われた固定観念的な演奏ではなかったということである。彼
の演奏は、フライブルガー・バロック・オーケストラと共演したハイ
ドンの協奏曲の録音で聴き親しんだが、なかなかに見せ場たっぷりの
演奏だったので、それとはかなり色合いが違って聴こえたのである。

もちろん過不足なく低音は鳴らしているのだが、重い低音ではなく、
全体のフォルムがしなやかなこともあって、聴き疲れすることがなか
った。

いわゆる大向こうをうならせるような“けれん”がないというのは、
重音を演奏する時にありがちな“ため”が少なくて、もう少し見得を
切ってほしいと思って人も少なくはないだろう。

そんな演奏の典型が第3番終曲のジーグで、重音部分のひきずりを極
力少なめにして弾いたのである。これが今時のバッハ解釈の一つとい
うことなのだろうかと考えながら聴いていた。

さしずめ、神様がカジュアルないでたちの人間の姿で降臨し、我々も
それが神だと知らずに気楽に会話をしたのだと言っていいのかもしれ
ない。

アンコールはクルタークの『シャドゥ』……1分半ほどの短いゲンダ
イオンガクで、作曲者の名前とそれ風の音楽に、客席も構えた様子で
聴き始めたが、あっけなく終わった瞬間の笑い声には、ケラスの術中
にまんまと嵌ってしまったぜという成分がたっぷり入っていたのだ。

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