悼話§中村吉之丞さん(歌舞伎役者)

中村吉右衛門の播磨屋一門の長老で、端正な脇女形として舞台を締め
ていた中村吉之丞が亡くなった。

吉之丞の舞台で記憶に残っているのは、吉右衛門が又平を演じた『傾
城反魂香』の土佐将監女房北の方。仁左衛門、玉三郎が顔を合わせた
『怪談牡丹燈籠』で幽霊となった七之助の娘お露と、同じく幽霊とし
て付き添う乳母お米だろうか。

宮廷絵師の妻である北の方は吉之丞の端正さが、乳母お米は吉之丞の
もう一面の怪異さがよく表れていたそんな舞台だった。

そんな二面性を持った脇女形が今存在しているだろうかと思うのだ。
吉右衛門が芯を務める時には常に脇を支えていた吉之丞は、2008年頃
を最後に舞台に立つことがなくなってしまった。それは本当に残念な
ことで“ああ、吉之丞だったらどんな舞台になるのだろう”と昨日の
訃報を眼にしながら、彼が演じたいくつかの役を思い返していたので
ある。

合掌

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