旅話§母をたずねて膝栗毛~藤山直美~

土曜日のフライブルガー・バロックオーケストラに続いて、日曜日の
新橋演舞場昼の部で藤山直美主演の『母をたずねて膝栗毛』を観てき
た。この日も長靴を履いて最寄り駅に向かい、コインロッカー預け。

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簡単に粗筋をば……母親に捨てられ、寺で育てられた三人組が、火事
で焼けた寺再興のために、母親を探し出して金を集めるというお話。

三人組は藤山直美、中村獅堂、高橋由美子。母親は水谷八重子、大津
嶺子、市村萬次郎という顔ぶれで、これに奥田瑛二、坂東巳之助が絡
むというところ。

芯である藤山直美がしっかりと重しになっているところに、獅堂演じ
る忠太郎――番場の忠太郎と魚屋宗五郎が合体したようなもの――が
居直ってのはじけっぷりを見せて客席を沸かせる。本業の歌舞伎では
ちょっとなあという獅堂だが、まともに芝居をしても直美ちゃんには
勝てるはずもないので、いわば捨て身の舞台である。

そしてもう一人、宮津藩主の側室お縫を務めた市村萬次郎の怪優ぶり
を忘れてはいけない。彼の芝居については、数年前にパルコ劇場での
三谷幸喜『決闘!高田馬場』における、おウメ婆さんの演技に驚き&
感心して以来気になる役者の一人だったが、今回も期待に違わぬ舞台
だった。

彼がやっていることのほとんどは歌舞伎そのものなのだが、藤山直美
と掛け合いする中で、側室から下世話な女性との落差が大きく、客席
が沸くのは、歌舞伎の型と世話芝居の描き分けがはっきりしているか
らなのだ。こういうところが歌舞伎役者の強みと痛感するのである。

獅堂、萬次郎と、もう一人の若手歌舞伎の巳之助もまた、精一杯の工
夫でもって笑いを取ることに成功していたと思う。

楽しい芝居を堪能することのできた日曜のひと時なのだった。

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