街話§J街通信[95]酒舎かんとりぃ

[承前]

神保町とその周縁暮らしも36年が経過した。人生の中で、これほどの
長時間にわたって傍観してきた街は、後にも先にも存在することはな
いのだ。

そんな時の流れの中で、多くの店の消長も目撃することになってしま
った。まさに“街は生きている”のである……よくも悪くも。

そうして消えていく店の一つに“酒舎かんとりぃ”というバーがあっ
た。靖国通りから一筋裏通りに入ってすぐのところにあって、店内は
極狭そのもの。確か4人か6人掛けテーブル一つにカウンター数席、
それに厨房という設え。

バーというからにはカクテル類も出していたはずだが、まだ二十代の
ぺーぺー時代に上司に連れられて店に入ると、出てくるのは決まって
ウィスキーの水割りであった。

そんなバーの扉が閉ざされっぱなしになったのは数年ほども前だった
だろうか。女丈夫の店主Sさんが体調を崩されたまま“かんとりぃ”
は1955年から続いた店に終止符が打たれたのだ。

画像

昨年10月にSさんは逝去され、間口一間くらいの店は先月取り壊され
先週通りかかったら更地になっていた。本当に猫の額ほどの広さしか
ない空間の店が数十年続き、多くの人々がその店で酒を呑み交わし、
そして神保町から去っていく……ちょいとばかり感傷的になった瞬間
である。

店正面の写真を撮っていなかった。見つかったのはこのリンクの中。
                            [続く]

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