愉話§呑藝春秋[19]神楽坂の渡津海閉店

[承前]

30年以上お世話になった神楽坂上の居酒屋“渡津海”が、今月一杯で
店を閉じるというので、名残りの酒を呑みに行ってきた。

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1980年代の初めに開店した。その時は神楽坂下の理科大裏に店を出し
ていたのが、10年ほど前に現在の位置に引っ越したのだ。カウンター
8席、4人テーブル一つと8人ほど入れる個室という小ぢんまりさ加
減は、2人が商うのにちょうどいい大きさである。

ビールはサッポロ黒生のみ、日本酒は信州の神渡のみという潔さで、
主がていねいに作るオーソドックスな和食は、ちょっと贅沢をさせて
もらうという感じだが、お勘定は実に実に良心的で、2回通っても福
澤さん一人でお釣りがきてしまうくらいなのだ。

というわけで、いつもどおりに黒生の中瓶を呑み呑み、角皿と小鉢2
つのお通しを食べる。季節の物を少しずつ並べた様子が、いかにも和
食の愉しみである。

お通し3皿だけでも十分に満足できてしまうのだが、それでも刺身か
焼き物を追加して、神渡の冷酒を二合もらう。この流れは30年変わる
ことはなく、店を訪れるたびに安心の溜め息をもらしてしまうのだ。

そうして3日後の閉店に先立って最後の酒と料理をいただき、簡単に
“お疲れ様、ありがとうございました”と挨拶をして店を後にした。
                            [続く]

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