祭話§パルジファル~新国立劇場~[中]

[承前]

正直を言うなら、10年以上前にクプファーは“枯渇”したと思ってい
たのである。ベルリンのウンター・デン・リンデンで観た『マイスタ
ージンガー』も『トリスタンとイゾルデ』の舞台も、少なくとも我々
の眼には“過去の人の舞台”になっていたのだ。

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ところがどっこい、しぶとく存在感を示したのである。クプファーは
仏教国と言っていいであろう日本の劇場を使い、こういう形でパルジ
ファルを演出してみようと考えたのであろう。

いまだに読み取ることはできないが、ワーグナーは『パルジファル』
の中に、キリスト教的なるものと仏教的なるものを入れ込んだという
ことになっている。それを日本で実現させたのがクプファーなのだ。

これを西欧の劇場で上演するならば、かなり強烈な拒否反応が起こる
ことは間違いのないところと思われる。それならば日本でというのは
自然な流れということでのようである。

袈裟がけの僧侶3人は、2幕のクリングゾルの花園では登場しないけ
れど、1幕と3幕では要所要所に現れて物語の進行を見守るのだ。

そんな演出の力を得て、飯守泰次郎の新国立劇場音楽監督最初の仕事
が順調に奏でられていく。トムリンソンのクリングゾル以下、手練れ
の歌手達が手堅く舞台を彩っていく。
                            [続く]

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