愉話§呑藝春秋[23]居酒屋チェーンの黄昏

[承前]

ブラック企業と目されて久しい某居酒屋チェーンが不振で、百店舗以
上を閉店させるのだという。

料飲店の関係者に聞くと、昨今は全般的に飲酒量が減っているのだそ
うで、チェーン系居酒屋の類が受ける影響は小さからぬものがありそ
うな気がしている。

特に若い世代の飲酒量の減少そして、居酒屋離れが顕著になっている
現状では、チェーン系居酒屋が縮小していくことは否めないのではな
かろうか。

大学に入り、少しばかり酒を覚えた頃、二十歳そこそこの人間が気軽
に酒を呑めるような居酒屋の類など、ついぞ見かけなかった。例えば
せいぜい“養老の瀧”がチェーン展開してはいたが、安い居酒屋では
あっても、当たり前といえば当たり前ながら、大学生が足繁く通う店
ではなく基本的に“サラリーマンの居酒屋”という時代だったのだ。

チェーン系居酒屋の黄金期はバブル経済の頃ということだろうか……
つまりは“酎ハイ”に代表される焼酎割りの全盛期でもあり、それが
居酒屋ブームを支えてもいたのだった。

その時代、ウィスキーの影は薄くなり、酎ハイのハイがハイボールの
ハイだなどとは誰も思わず、あまつさえホテルのバーでハイボールを
注文した時、若いバーテンダーが「ハイボールって何ですか?」と、
ハイボールを知らなかった時、大げさに言えば“一つの文化の危機”
ではないかと思ったのだ。

そして居酒屋ブームは終焉を迎え、気がついたらウィスキーが復権し
ていて、あちこちで気軽にハイボールを呑むことができる……大衆は
移ろいやすいということを露骨に示したような気がしている。

追記:本編では書き切れなかったが、外食産業退潮の裏には、愚なる
“アベノミクス”の悪しき影響があるともにらんでいるのだ。

                            [続く]

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