外話§壽初春大歌舞伎夜の部~残りは~

[承前]

話は前後するが10日に観た夜の部1本目と2本目についてまとめる。

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まず『番町皿屋敷』であるが、去年70歳を迎えた吉右衛門の青山播磨
が東京では初役だと知って驚いた。もう何度も演じているかとばかり
思っていたので、意外なものだと思った。

吉右衛門の舞台は間違いのないもので、歌舞伎座満場の客を惹きつけ
る力は疑いようがないものだ。ではあるのだが、青山播磨という人物
からすると、あまりにも吉右衛門が大きに過ぎてしまうように感じた
のは、あながち間違いではあるまい。

白柄組という喧嘩好きのゴロツキ集団のメンバーで、やりたい放題の
日々を過ごしている……年齢はまあ、二十代前半というところか。

そんな役柄と吉右衛門の芸との大いなる矛盾が生じるのはしかたのな
いことと思ってしまう。あまりにも分別に満ちた播磨が現出しては、
不思議な乖離現象が起こってしまうという物である。

菊が自分を試そうと皿を割ったと知った後、吉右衛門演じる播磨の慨
嘆はすばらしいものだったが、菊を殺して井戸に沈めた直後、喧嘩が
始まると聞き、花道を一目散にという様を見ながら、夫婦二人顔を見
合わせつつ“アホだなあ”と思ってしまったのも無理はない。

2本目『女暫』を観るのは2回目で、前回も玉三郎の巴御前だった。
それにしてもずいぶんと口跡がモゴモゴしていて、どうしたことかと
思ってしまった……3本の中では正月らしい出し物だったにもかかわ
らず、いささか物足りないところもあったが、我々のお目当ては、最
後の『黒塚』なのだった。

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