雅話§百人一首考[2]~はるすぎて~

[承前]

持統天皇(じとうてんのう)

春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山


古語で蝶々を“てふてふ”ということは、比較的早い時期に知ってい
たように記憶している。その刷り込みがあるものだから、下の句にあ
る「衣ほすてふ」を、一般的な現代語訳“衣をほすという”ではなく
“蝶々が衣(羽根)を乾かしている”という受け留めかたをしている。

だから、この歌を見ると……初夏の青空の下、新緑の天の香具山を背
景に、モンシロチョウが野の花にとまって、しばし自らの羽根を休め
ているのだという印象が頭の中で定着したまま、この年齢まできてし
まったのだ。

もちろん百人一首本来の意味で捉えるなら、生成り白の麻布が五月の
薫風でなびいている様は思い浮かんでくるので“蝶々が蝶々が”など
といつまでも拘らないほうがいいのかも知れない。

ネットの検索で、ふんわりと布団を掛けたような天の香具山の映像を
いくつか眺めていたら、5月半ばの好天の頃に大和路を歩いてみたく
なった。定年後の課題としては、訪れる機会の少なかった西日本へと
足を伸ばしてみようと考えている。

伊勢路から大和路にかけては、その第一候補として挙げられていて、
5月、あるいは11月の紅葉のタイミングに歩くことができれば、けっ
こうな見ものだと思うのだが。
                            [続く]

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